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芸術作品を創る心

 私は盆栽作家として四十年近く「盆栽の本質の美とは何か」を模索し続けて来た。園芸も盆栽も植物を鉢植えにすることに於いては同じ。園芸は花や葉や実の美しさを鑑賞し、華美・華飾の表面的な美しさによって心が癒される、反面盆栽は内奥に秘められたもののあわれの生死を感受する。長い時間経過による侘び寂び、時代が醸し出した風趣風韻に心が魅せられ、生命の尊厳に感動させられる。
文化勲章を受章した彫刻家の朝倉文夫は言う。「芸術創作は才能の訓練から生まれる、芸術家は知識人ではない、知識を与えても芸術家はできない、芸術家に必要な才能の発達は自分の好きなことをやることによって促される」。
盆栽と彫刻とは形を立体的に造り出すことに於いて、もっともよく似ている。しかし彫刻も盆栽もただ形を精巧に写すだけでは芸術作品とは言えないのである。対象そのものが持つ個々それぞれの精神・風格が美しく表現されなければならない。彫刻は対象の内部に秘められている美を掘り起こすために、その魂を捉えて余計なものを取り除く仕事だと言う。盆栽もそれと同じで、素材の持つ余計なものを取り除き、植物の成長力を気長に育み、形を整え、自然美を生動させることに於いて一致している。
生命ある盆栽を芸術作品にまで高めるためには、対象に挑む人間性の陶冶高揚を極めることが必要とされる。
今回、私が二〇一三年の第二十二回日本盆栽作家協会展に出品した真柏は、紀州産の山取りで、樹齢は五百年はたっている。一九九八年の第一七回日本盆栽大観展に出品し内閣総理大臣賞を受賞している。その頃の私は基本に固執し、綺麗に仕上げることにだけに囚われていた。しかし、何度も中国に訪れ、中国の盆栽を観ている時に重要なことに気付かされた。近年の日本の盆栽作品は綺麗に整えられた画一的な姿に仕上げられた作風だが、中国の盆栽は樹そのものが持つ個性を生かした作風である。中国の岭南盆景の力強い線の動きから、私は盆栽の本質の美とは何かを学んだのである。
今回の真柏の改作を見ていただきたい。園芸から盆栽に、面から線への改作である。綺麗に几帳面に整えられた枝棚を大胆に切り落とし、線の動きと空間を引き出した。大自然の厳しい風趣・風韻を引き出したのである。
展示後、さらになる美を求め舎利幹に穴を開けて厳しさを現出した。作家は美に対する「業の深さ」がなければ人の心を感動させる作品は創れない。そのためには日々のたゆまぬ精神の研鑽が必要なのである。

最後に、中国の古典「周禮」の経典の中の考工記にモノ創りについての四条件
「天地材工」がある。
       天に時有り 地に気有り
       材に美有り 工に巧有り
       此の四者を合わせ 然る後
       可以て良と為す

                                 盆栽作家  小林 國雄


    
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